ただの村人の、精一杯の覚悟と聖剣の物語り。

聖剣と勇者

私は人生を村人として一生を終えるか、勇者として戦うべきか迷っていた。

実はこういうことだ。
うちの村のほど近い林を抜けた先にある洞窟に、伝説の聖剣の1つが刺さっている。
いつもより早く農作業を終えた私は、その聖剣とやらを見に来て興味本位で引っ張って見た。
すると何の抵抗もなく聖剣は抜けてしまい輝きだしたので、慌てて元の位置に刺したのだ。

あと半月後の新月の日、魔族の王が復活すると王都では兵士を集めている。

このまま無かったことにして村へ帰れば、私には愛する妻と息子が待っている。
私の村は王都や砦から離れていて魔物も出ないし、今の暮らしに不満もない。
きっと平穏な日常を過ごせるはずだ。

この聖剣を抜いて王都へ向かえば、私は王の命によって最前線で戦うのだろう。
ろくに剣も持ったことがない男が、人間より強い魔族とまともに戦えるとは思えない。
だが、新たな勇者の話は聞いたことがないし、
きっと王都に集まった兵士たちだけで世界を救うことはできない。

私の村から王都まで歩いて半月かかる。すぐにでも決断しなければならなかった。

「落ち着いたら手紙を書こう」
洞窟のある林から出た私の手には、抜かれた聖剣があった。
私は勇者である前に父として、自分の村を守りたいだけなのかもしれない。
まだ勇者の自覚はないが、私は王都のある東へとゆっくり歩き始めた。

◆加筆・修正 完全版掲載先
コチラから読めます(別窓がひらきます)